良い油とは?油の重要性や選び方を「オイリスト」地曳直子さんに教えていただきました

近年「良質な油を適量摂取することが健康維持に役立つ」ということが知られるようになってきて、店頭ではさまざまな種類の油が並ぶようになってきました。
しかし、実際にどの油を選べばいいのか迷っている方も多いと思います。

そこで、「オイリスト」として油の重要性を広める活動をしている地曳直子さんに、それぞれの油の特徴や選び方、デメリットについても詳しくお伺いしました。

プロフィール

地曳直子

日本リポニュートリション協会 代表理事
​日本インナービューティーダイエット協会 顧問
日本オイル美容協会 顧問
国際食学協会 理事
「オイリスト」としてセミナー
開催や商品開発に携わり、健康のための脂質の重要性を広める活動をしている

Q: 油(脂質)の重要性を広める活動を始めたきっかけはなんですか?

実は、最初は植物療法を教えていたんですよ。それが家族の病気や色々な体験を通じて、食に関する栄養全般、特に分子栄養学に興味を持つようになりました。
子どもの頃から栄養学には興味があって勉強しているつもりでしたが、油の重要性を知って、それが私にとっては全く新しい発見だったんです。
そして、一般にはまだあまり知られていないと感じたので、この知識を広めることの重要性を感じ、油に焦点を当てた活動を始めるきっかけとなりました。

Q: 現在、どのような活動をされていますか?

今は主にセミナー活動を中心に行っていますね。それに加えて、メーカーの商品開発のサポートや、脂肪酸検査を広める活動にも力を入れています。
脂肪酸検査って、体内の脂肪酸のバランスを測るもので、健康状態を知るための重要な情報を提供してくれるんです。

Q: 脂肪酸検査とは具体的にどのようなものですか?

指先から少し血を採って、その血液をオーストラリアの分析所で調べるんです。これによって、体内の脂肪酸の種類やバランスを知ることができます。
とてもシンプルな方法ですが、体内の脂肪酸の状況を理解する上で非常に有効です。

Q: その検査は、どのような方におすすめですか?

特に炎症や動脈硬化などのリスクを知りたい方にはおすすめですが、実は誰にでもお勧めしたいんです。
多くの人が日常的に摂取している油の種類や脂肪酸のバランスについて、あまり意識していないんですね。植物油のラベル情報だけでは、その油が持つ脂肪酸の具体的な情報はなかなか把握しにくいですから。
慢性炎症や動脈硬化は、進行しても自覚症状がないことが多いので、脂肪酸状態を知ることで、これらの健康リスクに早期に対処できるようになります。検査による「見える化」を通じて、より多くの人々が健康管理を行うことの重要性を認識し、実践してほしいと思っています。
検査を受けることで、自分の食生活で摂取している脂肪酸の種類や量を知ることができ、食事の改善に役立ちます。
私はすべての人にこの検査を受けてもらい、自分自身の健康状態をより良く理解し、適切な食生活を送ってほしいと思っています。これにより、炎症のリスクを低減し、健康的な生活を送ることが可能になります。

Q: 「良い油」とはどういうものですか?

良い油というのは、実は一人ひとりの食生活によって異なるので一概には言えないんです。ただ、品質の面から言えば、酸化していない状態の油が良い油とされています。

Q: 油(脂質)は体にどのような影響を与えますか?

脂質はエネルギー源になる、細胞膜の構成成分となる、ホルモンのような働きをする脂質メディエーターの原料となる、という3つの大きな機能があります。
ひとくくりに油と言っても、含まれる脂肪酸の種類によってエネルギーへの変換のしやすさも違いますし、細胞膜の状態やつくられる脂質メディエーターの種類も変わるので、どんな脂肪酸を摂るかがとても重要です。

Q: 製造工程による良しあしの違いはありますか?

はい、製造工程が油の品質に大きく影響します。
化学精製や熱処理で成分が変化する場合もありますし、植物油本来の脂溶性栄養素が減少することもあるので、なるべくシンプルな製造方法の油を選ぶことをお勧めしています。

Q: 気を付けた方がいい油はどのようなものですか?

酸化しやすい油や、高温加熱によってトランス脂肪酸が生成される可能性のある油は避けた方が良いです。透明な瓶で光にさらされた状態で販売されている油は、酸化している可能性がありますね。

Q: 外食でよく使われている油はどのようなものですか?

外食では、パーム油やオメガ6のリノール酸が多い植物油がよく使用されています。パーム油には、LDLコレステロールを増加させたり炎症を起こす可能性のあるパルミチン酸が豊富です。オメガ6のリノール酸が多い油の過剰摂取も避けるべきですし、揚げ物や加工食品には、時にシリコンを含む油が使用されていることもあります。

Q: 植物性油脂と動物性油脂の違いはなんですか?

植物性油脂は、主にオメガ6やオメガ3などの不飽和脂肪酸が多く含まれていて、酸化しやすい特性があります。
一方で、パーム油のように動物性脂肪に近い性質を持つものもありますが、一般的には植物油は液体の状態で存在します。

Q: 植物性油脂と動物性油脂のメリット・デメリットはなんですか?

植物性油脂は不飽和脂肪酸が豊富なのがメリットですが、それが同時に酸化しやすいというデメリットにもなります。一方、動物性油脂には飽和脂肪酸が多く含まれており、酸化しにくい特性があります。植物性油脂と動物性油脂を選ぶ際には、それぞれの特性を理解し、バランス良く摂取することが大切です。製品によっては異なる特性を持つため、使用する油脂に応じた知識を持つことが重要になります。

Q: オリーブオイルの良い点はなんですか?

オリーブオイルはとても健康効果が高いオイルだと思います。
主成分のオレイン酸によるLDLコレステロールの低下作用もありますが、オリーブオイルの素晴らしさは脂肪酸組成よりもファイトケミカルですね。抗酸化力も高く、中でもオレオカンタールというオリーブ特有の成分には強力な抗炎症作用があり、近年では抗癌作用も報告されています。

Q: オリーブオイルを摂取する時に気を付けるべきことはなんですか?

オリーブオイルも油の一つですから、摂り過ぎには注意が必要です。
オレイン酸は中性脂肪にな りやすい分類に入るので、摂取量には特に気をつけたいですね。 

Q: オリーブオイルの選び方について教えてください。

エクストラバージンオリーブオイルの中でも、早摘みのものを選ぶのがおすすめです。
早摘みのオイルは、オリーブがまだ青い時に収穫されるので、オレオカンタールなどの成分が豊富に含まれています。完熟するとこれらの成分が減少するので、オレオカンタールの作用を期待する場合は早摘みを選ぶと良いです。

Q: アマニ油の良い点はなんですか?

アマニ油は、オメガ3のアルファリノレン酸が豊富で、現代人に不足しがちなオメガ3を補うのに最適なんです。しかも、圧搾法で軽くフィルタリングされただけのアマニ油には、体内で女性ホルモンに似た働きをするアマリグナンというリグナン類がたくさん含まれる可能性があり、健康をサポートしてくれるんですよ。

Q: アマニ油の選び方について教えてください。

アマニ油は酸化しやすいので、光にさらされた透明瓶のものは避けた方がいいですね。保管に気を使っているメーカーの製品を選ぶと良いでしょう。冷蔵で売られているものなど、温度管理がされている製品を選ぶことが大切です。

Q: MCTオイルの良い点はなんですか?

MCTオイルは消化にとても優しくて、すぐにエネルギーに変わります。
消化吸収された後、一部が肝臓 でケトン体に変わるのですが、このケトン体も脳や筋肉のエネルギー源として役立つほか、近年では炎症を抑える働きも報告されています。

Q: MCTオイルを摂取する時に気を付けるべきことはなんですか?

MCTオイルを選ぶ時は、ココナッツ由来かパーム由来かをチェックしてください。環境への影響が少ないココナッツ由来のものを選ぶ方が良いですね。パーム油は環境問題につながることがあるので、その点も考慮して選んでください。

Q: 外食でよく使われているパーム油はMCTオイルとは違うんですか?

そうですね、パーム油とMCTオイルは少し違います。MCTオイルで使われるのは、主にパームの核から抽出された中鎖脂肪酸です。パーム油が持つパルミチン酸は体に良くないとされていますが、MCTオイルに含まれる中鎖脂肪酸は、栄養的に見て悪いわけではありません。

Q: MCTオイルの選び方について教えてください。

MCTオイルを選ぶ際は、特にC8(カプリル酸)を95%以上含むものを選ぶと良いですよ。C8は吸収やエネルギー化がとても速く、ケトン体の生成量も多いので、より効果を感じられるはずです。ただし、C10(カプリン酸)にも健康上のメリットがあるので、何を目的としているかによって選ぶと良いでしょう。

Q: 米油の良い点はなんですか?

米油にはスーパービタミンEと呼ばれるトコトリエノールや米特有のγ-オリザノールという成分が含まれています。
どちらも強力な抗酸化作用を持つため、不飽和脂肪酸のリノール酸を高含有するにもかかわらず酸化しにくく加熱調理も可能です。
また、γ-オリザノールには中性脂肪を下げたり、自律神経の安定作用もあります。

Q: 米油を摂取する時に気を付けるべきことはなんですか?

特に大きな注意点はありませんが、どんな油も過剰摂取は避け、バランスの取れた食事にすることが大切です。油は体に必要な栄養素ですが、摂り過ぎには注意しましょう。

Q: 米油の選び方について教えてください。

米油を選ぶ時は、圧搾法で抽出されたものがおすすめです。圧搾法で抽出された米油には、溶剤抽出法よりもγ-オリザノールが豊富に含まれているんです。これが米油の抗酸化力を高めてくれるんですよ。

Q: その他、おすすめの油がありましたらご紹介ください。

今の時代、炎症性の病気が増えているので、ブラッククミンシードオイルをおすすめします。これに含まれるチモキノンという成分が、強力な抗炎症作用を持っていて、様々な病気に効果があるとされています。また、クリルオイルも脂質の面から見てとても優れており、健康補助食品として利用すると良いでしょう。

Q: 脂肪酸それぞれのメリットはなんですか?

脂肪酸には色々な種類があって、それぞれに良いところがあります。
たとえば、中鎖脂肪酸は吸収が早くて、消化吸収にも負担がかかりにくいんです。それに、抗菌作用もあるんですよ。
オレイン酸は、腸の動きを助けて、LDLコレステロールを下げる効果があります。
リノール酸は、肌の 潤いを保つセラミドの原料になるため、不足すると肌トラブルの原因にもなります。
α-リノレン酸は、腸内細菌によって機能性の高い脂質に変わったり、EPAやDHAに変換されて健康をサポートしてくれます。 

Q: 理想的な脂肪酸のバランスはどのようなものですか?

食事摂取基準から換算すると、オメガ6とオメガ3の比率は4〜5:1ぐらいなのですが、専門家の間ではそれだとオメガ6が多過ぎる、理想は2:1という意見もあります。
また、現代食はオメガ6が多いので、気づかないうちに10:1ぐらいになっている場合もあるので、オメガ6を意識的に減らしてオメガ3を補うことが大切ですね。

Q: 体内の脂肪酸バランスとはどのようなものですか?

体内で理想とされる脂肪酸のバランスは、オメガ6:オメガ3が2:1です。このバランスが保たれていると心血管系疾患や炎症のリスクが下がることが臨床研究からも分かっています。
そのことからも、先ほどの食事の脂肪酸バランスも食事摂取基準だとオメガ6が多すぎると言われているのですね。

Q: 自分に合った油の選び方は?体内の脂肪酸バランスとの関係は?

自分の体の脂肪酸バランスを見て、2:1の理想に近づけるように油を選ぶことが大切です。オメガ6が多めの場合は、オメガ3が豊富なエゴマ油やアマニ油、魚油を増やしてみてください。体の代謝に合わせて、直接EPAやDHAを摂るのも効果的ですよ。

Q: 脂肪酸以外に油にはどのような栄養がありますか?

油にはビタミンEやビタミンK、さらにはファイトケミカルや植物ステロールなど、健康に良い成分がたくさん含まれています。これらは抗酸化作用があったり、コレステロールの吸収を抑えたりするんです。特に米油に含まれるγ-オリザノールやコトリエノールは、普通のビタミンEよりも強い抗酸化作用があると言われています。だから、何を目的としているかによって、適した油を選ぶことがとても大切ですね。

Q: 油を摂るタイミングはいつが良いですか?

油を摂るのは、基本的に食事と一緒がいいですね。
食事で消化液が出ている状態で摂ると吸収が良くなります。
また特定の目的がある場合、例えば試合などでMCTを効率よいエネルギー源として使いたい場合は4時間前くらいに摂るのがベストですし、中性脂肪を下げるためにEPAやDHAを摂るのであれば、朝に摂る方が効果的です。

Q: 脂肪を燃焼させる効率的な摂り方はありますか?

脂肪を燃焼しやすくするためには、中鎖脂肪酸をうまく取り入れることがポイントです。中鎖脂肪酸を長期的に摂り続けることで、体が脂質を燃やしやすい状態に変わってきますから。

Q: 油を摂取して脂肪がつきやすい人とつきにくい人の違いは?

脂肪がつきやすい人とつきにくい人の違いは、筋肉量が大きなポイントです。筋肉量が少ないと脂肪がつきやすくなります。それに、EPAやDHA、中鎖脂肪酸を日常的に摂っている人は、脂肪がつきにくく、健康的な体を保ちやすいんです。EPAとDHAは、中性脂肪の合成を抑えたり、脂肪の燃焼を促したりして、太りにくい体を作る助けになります。

Q: 一日にどれくらいの量の油をとればよいのですか?

食事摂取基準では、全体の摂取カロリーにもよりますが、おおよそ成人女性で一日に約50〜60g以下、男性は60〜90g以下が目標値です。
これには食材に含まれる油も含まれるので、場合によっては食材だけでオーバーすることもあるのです。油脂を別途摂取する量はそれを考慮して調整する必要があります。
ただし、中鎖脂肪酸は吸収も代謝も糖質に近いため、 脂質よりも糖質の量を意識する必要があります。

Q: 油の摂り方で注意した方がいいことはなんですか?

油は量とバランスの両方に注意が必要です。
全体量が増えすぎないように気をつけつつ、脂肪酸の種類も意識してバランス良く摂取することが大切です。
同じ油だけを長期間使い続 けると脂肪酸のバランスが崩れがちなので、複数の油を上手に使い分けることもポイントです。
そして、酸化した油は健康に良くないので避けるようにしましょう。

Q: 加熱ができる油とできない油の違いはなんですか?

加熱に適した油とそうでない油の大きな違いは、酸化のしやすさにあります。
脂肪酸は二重結合が多いほど酸化しやすいので、二重結合のない飽和脂肪酸が主成分の油は酸化しにくく加熱調理に向いていますが、オメガ3脂肪酸のような多くの 二重結合を持つ脂肪酸が主成分の油は、酸化しやすいです。
また、油に脂肪酸以外の不ケン化物質が多いと劣化を早めることがありますね。 

Q: 揚げ物に向いている油はどのような油ですか?

揚げ物には、抗酸化物質が多く含まれているか、飽和脂肪酸が主成分で酸化しにくい油が向いています。米油やごま油は抗酸化物質が豊富なので加熱に強いです。
ココナッツオイルは飽和脂肪酸が多く酸化はしにくいのですが、発煙点が低いため長時間の高温調理だと発煙することがあります。

Q: 油が酸化するのはどのような時ですか?

油はまず光によって酸化します。光酸化した油は抗酸化物質が減少しているため、その後の加熱によって酸化しやすくなってしまいますので、油の保存時には光を避けることが重要です。

Q: 油を加熱する上での注意点はなんですか?

油を加熱する時は、その油の発煙点を超えないように気をつけることが大事です。
また、加熱時には脂肪酸を守っているビタミンEなどの抗酸化物質が変質し、その後脂肪酸の酸化が加速するので、ビタミンEなどの栄養素もそのまま摂取したい場合は、出来るだけ加熱せずに摂ることをお勧めしています。

Q: 酸化した油のデメリットはなんですか?

酸化には段階があり、初期の酸化物は吸収率が低く、お腹をこわすなどの症状が起こりやすいですが、更に酸化が進んだアルデヒドの場合は、腸から吸収されやすく、血液に乗って全身に悪影響を及ぼすことがあります。
アルデヒドの一種のヒドロキシノネナールは、アルツハイマー型認知症のリスクを高めたり、インスリン分泌を阻害したり、アレルギーを悪化させるという報告があります。

Q: 油は再利用できますか?

油の再利用はあまりおすすめできません。
一度高温で加熱した油は、再加熱するとアルデヒドなどの有害物質が 生成されやすくなるんです。できるだけ新鮮な油を使い、再利用は避けた方がいいでしょう。

Q: 油の上手な保存方法は?

油を保存するときは、オメガ3系の油は冷蔵庫で、ごま油やオリーブオイルは冷蔵庫だと固まることがあるので、冷暗所で保管すると良いですね。
ココナッツオイルは常温でも大丈夫です。
開封した油は特に光を避け、空気に触れさせないようにすることが大事です。そうすることで、酸化を防ぎ、油を長持ちさせることができます。

Q: 油を使ったおすすめレシピはありますか?

特に決まったレシピというのはないのですが、その時々の食材やお料理に合わせて使い分けると良いと思います。
和食のような、あまり香りをつけたくないお料理には米油、南国風にしたい時はココナッツなど、油を調味料の一つとして使う方法もお勧めしています。
また、きんぴらなど本来炒めてから煮るようなお料理は、最初に油の代わりに水を入れるウォーターソテーという調理法にして、最後にごま油など風味の良い油を加えると、栄養素も壊さず美味しく仕上がります。
油を風味づけに使う場合は特に、精製度が低く植物の風味が生きた良質な油を選ぶと、より美味しく健康的なお料理を楽しめます。

Q: 今後どのような活動をしていきたいと考えられていますか?

これからも脂質の重要性を広める活動を続けていきたいですね。特に、脂肪酸検査をもっと沢山の方に知っていただきたいです。
体内脂肪酸バランスを見える化することで、一人ひとりが自分の健康状態を正しく理解し、適切な食生活を 送れるようにサポートしていきたいと思っています。
まだまだ知られていない、脂質の心身への影響を広めることで、皆さんの健康に貢献していくことが目標です。

かわしま屋のおすすめの油

かわしま屋では、脂肪酸を理想的なバランスで摂取できるオイルを始め、良質な植物油を多数とりあつかっています。

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この記事を書いた人

コンテンツ、写真撮影担当。暇があったらキッチンで発酵食品や保存食品を作ったり、写真を撮ったりしています。趣味は一人で映画に行くこと。