酪酸菌の健康効果と危険性は?多く含まれる食品も

記事の監修
管理栄養士
安藤
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。

健康な腸を作ってくれる腸内細菌の一種として、近年話題になっている酪酸菌(らくさんきん)。 聞いたことはあっても、一体どのような菌なのかご存じの方は少ないのでは?

そこで今回は、酪酸菌の安全性、どんな食品に含まれているか、その健康効果について調べてみました。酪酸菌を日常の食事にどう取り入れるか、腸内での酪酸菌の増やし方、乳酸菌との違いなど、酪酸菌に関する全てをわかりやすく説明しています。どうぞご覧ください。

もくじ

酪酸菌とは?

酪酸菌とは

酪酸菌の特徴

酪酸菌(英語:Butyrate-producing bacteria)は、腸内に届いた食物繊維を分解・発酵して酪酸を生成する菌の総称です。酪酸を作る腸内細菌は一つではなく、宮入菌(Clostridium butyricum)やRoseburiaなど、複数の菌が知られています。酪酸菌そのものと、酪酸菌がつくる酪酸は別物で、酪酸は短鎖脂肪酸の一種に分類されます。酪酸菌は動物の腸内だけでなく、土壌などにも生息しています。

腸内で酪酸が作られる仕組み

酪酸菌はビフィズス菌や乳酸菌と同様に食物繊維をエサとして増殖します。食物繊維などを発酵して酪酸を作る菌は複数いて、腸内では、ある菌が作った乳酸や酢酸を別の菌が利用して酪酸を作るなど、菌どうしで代謝物をやり取りすることもあります。

短鎖脂肪酸と酪酸の重要性

酢酸、プロピオン酸、そして酪酸は短鎖脂肪酸と呼ばれ、善玉菌による発酵によって生成され私たちの健康にとって重要な役割を果たしています。
短鎖脂肪酸は脂質を構成する脂肪酸のことで、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の増殖を抑制したり、免疫力を整える働きがあるとされています。さらに、蓄積しにくい脂肪酸であることから、ダイエットや肥満予防の面でも注目されています。

酪酸の役割と体内での利用

酪酸菌は腸内環境を整える短鎖脂肪酸の生成に必要な菌ということなのです。短鎖脂肪酸の1種である酪酸は、大腸から吸収されて全身の臓器や筋肉で代謝に使われたり、生体調節機能を果たすとされる酢酸に対し、酪酸はそのほとんどが大腸の上皮細胞のエネルギー源として利用されます。

酪酸菌と乳酸菌の関係性

乳酸菌は腸内環境を整えることで酪酸菌の活動を助けるはたらきがあります。乳酸菌は腸内のpHを低下させることで有害な細菌の増殖を抑え、酪酸菌が活動しやすい環境を作るとされています。
乳酸菌と酪酸菌は共存関係にあることが多く、互いに腸内環境を改善することで全体の健康に寄与します。


酪酸菌に危険性はないの?

酪酸菌のメリットとデメリット

酪酸菌の安全性について

発酵食品には、チーズやぬか漬けのように独特の香りや風味を持つものがあり、「これって腐ってる?」と心配になることもありますよね。香りだけで、食品や菌の安全性は判断できません。
酪酸菌には多くの種類があり、安全性の情報は菌株や製品ごとに確認する必要があります。たとえば、医療用の酪酸菌(宮入菌)製剤「ミヤBM細粒/ミヤBM錠」は、「腸内菌叢の異常による諸症状の改善」を効能・効果として承認されています。

参考:PMDA「ミヤBM細粒/ミヤBM錠」

酪酸菌の副作用について

酪酸菌を含む食品やサプリメントは、体質や体調によって合わない場合もあります。体調に不安がある方や治療中の方は、医師や薬剤師に相談してください。

それでは、どのような食べ物に酪酸菌が含まれているか見てみましょう。

酪酸菌を含む食品|腸内の酪酸菌を増やす方法は?

酪酸菌を含む食品

酪酸菌を含む食品

  • 酪酸菌は土の中や水に存在する菌で、肉や魚、穀類、野菜、果物の加工品に混入することも多い菌です。
  • ナチュラルチーズやぬか漬けなどの漬物、味噌や醤油などの中にも入っていることがあるといわれています。

「酪酸臭」と呼ばれる独特の臭いや、食品の色を変える、ガスを発生させる性質を持っているため、一般的には食品において歓迎される菌ではないとされています。

食品の中では、中国や台湾でよく食べられている「臭豆腐」から、酪酸を産生するClostridium属の菌が分離された報告もあります。ただし、食品や製法によって含まれる菌は異なります。
食品から酪酸菌そのものを意識してとるのは難しいため、普段の食事では「酪酸菌を含む食品を探す」より、腸内の酪酸菌のエサになる食物繊維を増やす方が取り入れやすいです。

酪酸菌が多く含まれている臭豆腐
臭豆腐

腸内の酪酸菌を増やす方法

  • 腸内の酪酸菌を増やしたいなら、まず意識したいのは酪酸菌そのものを食べることより、エサになる食物繊維を増やすことです。食物繊維は酪酸菌だけでなく、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌にも利用されます。特に水溶性食物繊維は腸内細菌のエサになりやすいため、普段の食事に足しやすい食品から取り入れられます。

水溶性食物繊維が多く含まれている食材

穀類…オートミール、そば、ライ麦パン
野菜…ごぼう、モロヘイヤ、ニンジン、蒸しサツマイモ、納豆、アボカド、オクラ
その他…ごま、なめこ、わかめ、ひじきなどの海藻、寒天

レジスタントスターチを含む食品も取り入れる

水溶性食物繊維に加え、米や豆類、じゃがいも、バナナなどに含まれるレジスタントスターチも、腸内で酪酸を増やす食べ方として取り入れられます。健康な成人を対象とした食事試験でも、レジスタントスターチを多く含む食事で、多くの人で便中の酪酸濃度が高くなりました。ただし、増え方には個人差があります。特別な食品を探さなくても、主食や副菜、間食で取り入れやすい食品から始められます。

参考文献:McOrist AL, et al.(2011)“Fecal butyrate levels vary widely among individuals but are usually increased by a diet high in resistant starch”, The Journal of Nutrition

乳酸菌は腸内環境を整えることで酪酸菌の活動を助けるはたらきがあります。乳酸菌は腸内のpHを低下させることで有害な細菌の増殖を抑えるため、酪酸菌が活動しやすい環境を作ることに役立ちます。

食事に加えて乳酸菌も取り入れたい方には、かわしま屋の日本の発酵食品由来の植物性乳酸菌パウダーがあります。

酪酸菌の効果

酪酸菌の効果

酪酸菌や酪酸は、免疫、腸管、代謝など幅広いテーマで研究されています。過敏性腸症候群ではヒト試験もありますが、免疫や大腸がんなどは動物・細胞研究を中心に検討されています。研究の進み具合はテーマによって違うため、以下ではヒトで確認されていることと、まだ研究段階のことを分けて紹介します。

免疫との関係|動物実験での研究

酪酸菌が作る酪酸には、免疫の過剰な反応にブレーキをかける制御性T細胞を増やす働きがあるとされています。動物実験では、酪酸を加えた餌を与えたマウスで腸炎が軽くなった結果も報告されています。免疫との関係を意識する場合も、特定の症状への効果を狙うより、食物繊維をとって腸内で酪酸が作られやすい環境を整えるところから始めるのが取り入れやすい方法です。

参考文献:大野博司(2014)「腸内フローラと生体防御・免疫制御:統合オミクスによる解析」,日本臨床免疫学会会誌(Vol. 37 No. 5)

大腸がんとの関係|細胞を使った研究が中心

食物繊維の摂取によって腸内の酪酸が増えることと、大腸がんリスクとの関係が研究されています。酪酸ナトリウムを使った細胞研究では、結腸がん・直腸がん細胞の増殖を抑え、細胞死を促す反応が確認されています。こうした研究も、酪酸菌だけを増やすより、普段から食物繊維をとる食生活が大切とされる背景の一つです。

参考文献:Jintao Zhang,Man Yi,Longying Zha,Siqiang Chen,Zhijia Li,Cheng Li,Mingxing Gong,Hong Deng,Xinwei Chu,Jiehua Chen,Zheqing Zhang,Limei Mao, and Suxia Sun(2016)”Sodium Butyrate Induces Endoplasmic Reticulum Stress and Autophagy in Colorectal Cells: Implications for Apoptosis”,PLOS ONE

血糖コントロールとの関係|食物繊維の研究

食物繊維を増やした食事で腸内細菌の構成が変わり、血糖コントロールが改善した研究があります。酪酸も、その仕組みに関わる物質の一つとして研究されています。血糖値が気になる場合も、酪酸菌だけを狙うより、食物繊維をとれる食事を整える方が日常には取り入れやすいでしょう。

参考文献:Liping Zhao, Feng Zhang, Xiaoying Ding, Guojun Wu, Yan Y. Lam, Xuejiao Wang, Huaqing Fu, Xinhe Xue(2018)”Gut bacteria selectively promoted by dietary fibers alleviate type 2 diabetes”,Science 09 Mar 2018:Vol. 359

過敏性腸症候群との関係|ヒト試験の結果

お腹の症状については、酪酸や酪酸菌を使ったヒト試験があります。マイクロカプセル化酪酸ナトリウムでは、過敏性腸症候群の排便時の痛みや排便習慣に改善がみられました。下痢型過敏性腸症候群の患者にClostridium butyricumを摂取してもらった試験でも、全体的な症状や生活の質、便回数でプラセボ群との差が確認されています。クローン病への応用も研究されています。便通やお腹の調子を目的に酪酸菌を選ぶなら、単に「酪酸菌配合」だけでなく、使われている菌の種類や製品の表示まで確認すると選びやすくなります。

参考文献:Banasiewicz T, Krokowicz Ł, Stojcev Z, Kaczmarek BF, Kaczmarek E, Maik J, Marciniak R, Krokowicz P, Walkowiak J, Drews M.(2013)”Microencapsulated sodium butyrate reduces the frequency of abdominal pain in patients with irritable bowel syndrome.”Colorectal Disease2013 Feb;15
参考文献:Sun YY, et al.(2018)“The effect of Clostridium butyricum on symptoms and fecal microbiota in diarrhea-dominant irritable bowel syndrome: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial”, Scientific Reports

酪酸菌と乳酸菌の違いは?

乳酸菌も酪酸菌も善玉菌ですが、作る物質や腸内での働きには違いがあります。

比較する点酪酸菌乳酸菌
主に作るもの酪酸(短鎖脂肪酸の一種)乳酸
代表的な菌の例宮入菌(Clostridium butyricum)、Roseburia などラクトバチルス属、ラクトコッカス属 など
腸内での主な役割作られた酪酸は、大腸の上皮細胞のエネルギー源になる腸内を酸性にし、悪玉菌が増えにくい環境づくりに関わる
商品を選ぶとき確認する点菌の種類(菌種・菌株)が書かれているか乳酸菌の種類(菌種・菌株)が書かれているか

表は代表的な違いをまとめたもので、菌の性質は種類や菌株によって異なります。酪酸菌そのものを取り入れたいなら酪酸菌を含む製品、乳酸菌も含めて腸内環境を整えたいなら発酵食品や乳酸菌を含む食品・商品も候補になります。どちらか一方だけに絞る必要はなく、普段の食事では食物繊維をとることも大切です。

腸内フローラの多様性を高めて腸内環境を整えたい方に


酪酸菌を増やす生活習慣は?

酪酸菌を増やす生活習慣

食物繊維を摂る以外では、運動習慣も酪酸菌との関係が研究されています。継続的な運動で腸内の酪酸菌が増えた報告があり、ヒト研究をまとめた系統レビューでも、運動後に酪酸産生菌の一つであるRoseburiaが増えた研究が複数あります。

研究と同じ運動メニューを再現する必要はありません。歩く時間を増やす、階段を使う、ヨガをするなど、続けやすい形で体を動かす習慣を足してみてください。

参考文献:Cullen JMA, Shahzad S, Dhillon J(2023)“A systematic review on the effects of exercise on gut microbial diversity, taxonomic composition, and microbial metabolites: identifying research gaps and future directions”, Frontiers in Physiology

酪酸菌を取り入れる方法とサプリの選び方

酪酸菌の摂取にはサプリがおすすめ

食品から酪酸菌そのものを意識してとるのは難しいため、菌自体を取り入れたい場合は、酪酸菌を含むサプリメントや整腸剤が選択肢になります。サプリメントを選ぶときは、菌の種類(菌種・菌株)や商品表示を確認しましょう。

食事では食物繊維やレジスタントスターチをとって、腸内で酪酸が作られやすい環境を整えます。整腸目的で医薬品を使う場合は、サプリメントとは別に酪酸菌製剤があるため、医師や薬剤師に相談してください。

乳酸菌も合わせて取り入れたい場合は、乳酸菌を含む商品も選択肢になります。乳酸菌は腸内環境を整え、酪酸菌が活動しやすい環境を作るとされています。

かわしま屋で掲載している下の2商品は、乳酸菌パウダーと乳酸菌サプリです。毎日の食事に乳酸菌も取り入れたい方は、日本の発酵食品から抽出した植物由来の乳酸菌パウダーも選べます。


酪酸菌についてのQ&A

酪酸菌はダイエットに効くのでしょうか?

酪酸菌だけで体重が減ると確認されたわけではありません。ダイエット目的なら、まず食事や運動を整えることが土台になります。そのうえで、酪酸を直接とる試験として、2026年に、過体重・肥満の成人46人が低エネルギー食に酪酸ナトリウムを組み合わせた12週間のヒト試験が報告されました。糖尿病のない人では、プラセボ群より体重減少が大きくなりました。ただし、酪酸ナトリウムは酪酸菌そのものとは別の成分のため、この結果を酪酸菌サプリの効果として受け取ることはできません。体重管理では食事や運動を土台にし、腸内環境も整えたい場合に、食物繊維をとる食事などを取り入れるのが自然です。

酪酸菌はヨーグルトに含まれていますか?

一般的なヨーグルトでは乳酸菌が使われ、商品によってはビフィズス菌なども配合されています。酪酸菌が標準的に含まれているわけではないため、どの菌が使われているかは商品表示で確認してください。

酪酸菌と他の善玉菌の違いは何ですか? 

酪酸菌は酪酸を作るのが特徴で、乳酸菌は主に乳酸、ビフィズス菌は乳酸や酢酸などを作ります。腸内ではそれぞれの菌が作った物質を別の菌が利用することもあるため、どれか一つだけを増やせばよいというものではありません。酪酸菌を意識する場合も、食物繊維や発酵食品を含めて腸内環境全体を整えるのが基本です。

酪酸菌はアレルギーに効きますか?

酪酸が免疫の過剰な反応を抑える仕組みは研究されていますが、酪酸菌をとればアレルギー症状が改善するとまでは確認されていません。アレルギー対策として酪酸菌だけを選ぶのではなく、普段の食事で食物繊維をとり、腸内環境を整える一環として考えるのがよいでしょう。

宮入菌とは何ですか?

宮入菌とは酪酸菌の一種で、1933年に宮入近治氏によって発見されました。宮入氏はミヤリサンという製薬会社を作り、酪酸菌入りの整腸剤などを販売されています。

酪酸菌の摂取量に制限はありますか?

食品として酪酸菌やそのエサになる食物繊維をとる場合、酪酸菌だけの量を細かく数える必要はありません。サプリメントは商品に書かれた目安量、整腸剤は用法・用量に沿って使いましょう。

参考文献:Testa R, et al.(2026)“Targeting weight loss and blood glucose control with oral sodium butyrate in overweight/obese adults with and without type 2 diabetes: A proof-of-concept randomized controlled trial”, Clinical Nutrition

管理栄養士からのコメント

乳酸菌やオリゴ糖などに加えて、新たな腸活のキーワードになる「酪酸菌」乳酸菌やオリゴ糖など基本の腸活にプラスして試してみてもいいですね。

管理栄養士プロフィール

安藤

老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。
2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
また「食を見直すならまずは毎日使う調味料から」をコンセプトに地元愛知県三河のみりんや味噌などの伝統的な調味料の素晴らしさを伝えるセミナーなども開催。

食や栄養に関すること全般ですが特に
・調味料について(みりん、味噌や醤油などの製法やどんなものを選ぶと良いかなど)
・体に優しいスイーツの選び方、作り方
・ダイエットレシピの考案
・時短レシピの考案を得意としています。

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酪酸菌とは

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この記事を書いた人

パン作りと温泉をこよなく愛する2児の母。老後は伊豆で大きな犬と暮らすのが夢です。豆乳が好き、猫は苦手。

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